この段階で行うことは、アイデアの詳細化である。最初にこれから作るサービスを使うユーザーがどのようにふるまうか、どのような経過を経て体験価値を感じるかといって理想のUXを詳細化する。機能や性能についての詳細化は想定しないといけない場合を除き、現段階においてはまだ行わない。
この段階においてコンセプトはまだ抽象的であり、コンセプトが変わることも起こりうるがブラッシュアップの過程と捉えれば良い。ただ、体験価値がぶれているまたはペルソナで示した想定ユーザーの目標を解釈し直している場合は問題であり軌道修正する必要がある。
この段階において制作する視覚化表現はこの後の段階において、ユーザーに評価してもらう素材となり、プロトタイプなど具体的なデザインへ発展させるための基準であり目標となる。
目的
- コンセプトの製品・サービスが、どのようなユーザー体験となるかを検討し、時系列に沿った体験の様子を視覚的に表現する
- ユーザーのモチベーション、利用環境を含む利用文脈、利用に対する反応を時系列に沿って検討することで、製品・サービスの機能的な要件の概要を明らかにする。
手順
手順1. UXデザインのコンセプトを確認する
これまで同様、前段階の流れで行う場合は小省略すれば良い。コンセプトは複数あると思われるが、事前に優先度をつけるか、この後の段階においてメンバーの投票において絞り込むと良い。コンセプトが多いと多いほどUXの検討作業もその数に応じて多くなる。
手順2. シナリオの作成
コンセプトごとに理想のUXを検討し、一般的にはユーザーの行動を表現するアクティビティシナリオを作成する。もしくはアクテゥングアウト(寸劇)をやることでも理想のUXは明らかになる。モチベーションの変化を想像しやすくなるので、それらの要素をシナリオに反映させる。
尚、今後の検討作業ではペルソナや価値マップ、ジャーニーマップなどユーザーモデルを壁に張るなどして、メンバーがいつでもユーザーの情報を確認できるようにし、実際のユーザーの利用文脈との乖離を防ぐようにすると良い。手順3にて述べている題目を参考にアウトプットすると良い。
手順3. シナリオの評価、修正、補填
作成したシナリオをメンバー間でウォークスルー評価を行ったり、チェックリストを用いた評価を行ったりなどして必要に応じて修正を加え仕上げていく。また、理想のUXを共有する相手に合わせてシナリオ以外の視覚化表現も作成する。スケッチやイラスト、ビデオなど様々な共有媒体がある。
<コンセプトに対応するUXの視覚化表現>
- シーンごとのアクティビティシナリオ
- アクティビティシナリオのその他の視覚化表現(例:ストーリーボード)
<アクティビティシナリオから導出した製品・サービスへの要求事項およびタスクの概要>
- シナリオを成立させるための製品・サービスの要求事項
- シナリオに関連する主なタスク
手法
抽象度の高いコンセプトをより具体的にしていくには、徐々に具体化していく必要がある。最初から詳細化できる場合もあればあえて抽象度高いままにとどめ、ユーザーの評価を聞く方が良い場合もある。UX検討の進展に合わせて、適切な抽象度での表現を採用することがポイントである。
文章(シナリオ)として表現する手法
- アクティビティシナリオ(構造化シナリオ法)
- 体験談型バリューストーリー
ビジュアルイメージを中心に表現する手法
- 9コマシナリオ
- ストーリーボード
- ジャーニーマップ(TO-BE モデル:提案)
演技で表現する手法
- アクティングアウト
- ビデオビジュアライゼーション(体験ビデオ)
UXDコンセプトシート:
体験価値に基づくアイデアを整理したものであり、UXは抽象度が最も高い。ここから徐々に具体化させて行く。
体験談型バリューストーリー:
時系列は表現できないが、ユーザーの利用のモチベーションをビジュアルイメージを用いることで体験価値や利用文脈をわかりやすく表現することができる。
9コマシナリオ:
時系列を表現でき、UXの全体像を概要的に表現するのに適する。
ストーリーボード:
詳細なアクティビティシナリオをビジュアルイメージを用いて表現したものである。多くの情報を表現できるため、具体的なデザインを進めるための基盤となる表現として用いることができる。