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体験価値の伝達と保持のための指針の作成

by tagami

この段階で行うことはサービスの開発後において、サービス以外の多様なタッチポイントをデザインするための指針利用実態を計測するための基盤をつくることである。作ったサービスを使ってもらうには告知・広告を打つなどして知ってもらい、サービスの利用中にはサポートセンターでの対応など様々なタッチポイントがあるが、それらすべてにおいて一貫したものにするためのデザインの指針づくりと長期的なモニタリングの計画を立てる。

ビジネスモデルキャンバスといったフレームワークを用いてサービスを提供する仕組みについて検討することについて紹介したが、それだけで終わるものではなく仕組みの設計もサービスの開発同様多くの時間と専門的な技術を要する。ここまでに検討したUXを実現するよう一貫して取り組むことが重要となるすべてのタッチポイントが目標とするUXを実現するための要素でありそれらが一貫して同じ体験価値を実現することを意識して計画・実施される必要がある。例えばWEB広告で宣伝したときに過度な期待を与えてしまい、実際に利用した際にユーザーをがっかりさせてしまうといったことを防ぐために、あらゆるタッチポイントの計画・実施にUXデザインのコンセプトを適用してもらえるよう、ガイドラインやコンセプトブックなどにより指針を示す必要がある。

また、利用実態を把握し目標とするUXが実現できているかをモニタリングしつつ、改善点を発見するための長期的なモニタリングも重要となってくる。モニタリングによって発見された問題点が、デザインのガイドラインなどと照らして改善の範囲を超える場合には新しいバージョンや新しい製品の開発について検討・判断し、UXデザインプロセスの最初の段階から始める。

目的

  • 製品・サービス以外のユーザーとのタッチポイントを、体験価値および目標とするUXを尊重し一貫して計画・実施されるようデザイン指針を作成する
  • 製品・サービスが提供された後、目標とするUXが適切に実現されているかをモニタリングするために長期的に利用実態を把握する基盤を整備する

手順

ここでは指針やブックなどを作成していくが、これらはあまり厳密なものにする必要はない。体験価値を強調するのにふさわしい表現(トーン&マナー)と、避けるべき表現(タブー)のポイントについて言及しておくと良い。

手順1. デザイン指針の作成

デザイン指針は企画書やデザインの仕様書をもとに作成される。タッチポイントをデザインする際には、特にサービスの体験価値を表現するビジュアルデザインが求められる。ロゴやカラーなどブランドに関連するイメージを活用しながら、適切なデザインが行えるよう基本的な情報と方針を整理する。下記を参考にアウトプットをまとめると良い。

  • デザイン指針の目的と活用方法
  • サービスのコンセプトと目標とするUX
  • ユーザー像(ペルソナ)
  • タッチポイントを計画・設計・デザインする際のUXの観点での指針
  • サービスのブランド関連のビジュアルデザインを適用する際の指針

手順2. コンセプトブックの作成

コンセプトブックはサービスのコンセプトを誰もが理解しやすい形で表現したもので、主にサービス自体の開発に関わっていない関係者に伝達することを目的としたものである。人によるサービスの場合は実際に接客を行うスタッフにもコンセプトを理解してもらう必要がある。下記を参考にアウトプットをまとめると良い。

<下記の要素を視覚的にわかりやすく表現したもの>

  • サービスのコンセプトと目標とするUX
  • ユーザー像(ペルソナ)
  • サービスのブランド関連のビジュアルデザイン(ロゴやビジュアル等) 

手順3. 長期モニタリングの計画立案

長期モニタリングの計画を立案する際は、UXメトリクスを参考にしつつ計画と方法の検討を行う。ここで注意しておきたい点は、単にデータを収集することが目的ではないということだ。目標とするUXが実現しているかを検証するとともに改善や次期バージョンの開発を判断するための情報を集めるということを理解しておきたい。そのため、得られた情報を活用する方法や改善の判断を行う体制とその責任者についても明確にしておき、モニタリングを最大限活用できるよう計画を立案することが大切である。

アプリなどでログを取ることはよくあるが、これは利用中のログでありそのほかのタッチポイントが含まれていない点には注意が必要である。あくまでも方法の一つであることを理解しておきたい。

また、ユーザーに対して定期的に行う満足度アンケートなどの実施と回収を行える仕組みなども考慮に入れて計画を立てると良い。

  • 長期的モニタリングの目的と活用方法
  • 常時把握するデータの種類と収集方法および指標
  • 定期的に把握するデータの種類と収集方法および指標
  • 不定期に把握するデータの種類と収集方法および指標
  • 定期レポートのタイミングと内容
  • 長期的モニタリングの実施体制
  • 改善および改バージョンの判断の方針と責任者

手法

サービスのコンセプトを組織内・外で共有するための手法

  • コンセプトブック
  • クレド

デザインの一貫性を保持するための手法

  • ブランドガイドライン
  • デザインガイドライン

長期的モニタリングの手法(一般的なもの)

  • アクセスログ解析
  • コールセンター/ヘルプデスク解析

この段階における手法は整備が十分ではなく、ここにあげたのはブランディングの手法として用いられる手法が中心となっている。だがその内容はUXデザインにおいて十分に活用できるものとなっている。
ブランディングは企業のアイデンティティ確立のためロゴやビジュアル、コピーなどを作成するが、その仕様ルールを整備することでブランドイメージを発信する基盤を作るのが一般的である。UXデザインにおいても体験価値を魅力的に伝えるとともに一貫した体験価値を実現するための基盤が必要であり、ブランディングの手法を活用することができる。

UXデザインにおいてユーザーが感じる価値の本質は「体験そのもの」のため、本人が実際に体験して初めて特徴や品質が理解されるという特徴がある。このためサービスを使用する前に体験価値をわかりやすく伝達することが難しく、ここをどう解決するかが大きなポイントとなる。サービスを伝える際に「どんな風に」それが実現できるかを端的に伝えなければいけない。こうした際にはタグラインといったブランディングの手法などが役に立つ。

参考文献