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利用文脈とユーザー体験の把握

by tagami

この段階で行うことは調査である。調査といっても市場調査のためのアンケート調査のように多くの量的データから市場やユーザーの実態を把握するようなものではなく、実際の利用環境でのユーザーやステークホルダーの実態をその人の文化的・心理的な背景にまで迫るように丁寧に把握するという調査を行う、これがこの段階における重要なポイントである。調査人数は多くなくても良い。また、そのようなリッチな情報を得られる調査法を適切に選ぶこともポイントである。(実に多くのサービスやモノが提供されている中、表面的に調査しただけではデザインのヒントになるような結果は得られない。)

尚、新しいサービスを開発する際の調査対象者はどうすればいいかと言うと、現在既に提供されているもので似た体験を提供しているものを探し、そのユーザーについて調査すれば良い。

実際の利用環境におけるユーザーの行動はサービスの提供者側の意図とは全く違い、想像もしていない使われ方が当たり前のように行われている場合がほとんどであるため、この段階でのユーザー理解のための調査は意義深い。先入観や固定観念を取っ払いフラットな姿勢で挑むのが望ましい。

この段階における目的

  • デザインが実現すべきことの手がかりを得るために、デザイン対象となるユーザーの行為について、人々の利用文脈における行為の実態や状況を調査によって把握する。
  • ユーザーの体験価値や本質的ニーズに迫れるよう、人々の文化的・心理的な背景まで含んだリッチな情報を収集する 

手順1.プロジェクトの目的、方向性の確認

ビジネス戦略の把握を行うことが不可欠である。デザイン対象となる行為はプロジェクトの目的に示されていることが多い。

手順2.調査計画を立案する。

計画書として下記内容についてまとめると良い。

  • デザイン対象となる行為の定義(範囲や対象となる状況等)
  • 調査方法の選定とその理由
  • 対象ユーザーの仮説と調査対象者の設定
  • 調査対象者のサンプリング方法
  • 調査対象者の属性等
  • 調査実施日、実施状況等 

まず前提として、計画立案の正確さや的確さは初期段階で慎重になるよりも、一度仮説的な調査計画で調査を実施し、必要に応じて修正した計画で調査を繰り返す方が良い。特にこれまでに扱ったことのない行為を対象とする場合は、一回の調査で上手く実施しようとするよりは、手軽にできる方法でも良いので、調査の範囲も検討しながら繰り返し行う方が良い成果を得られることが多い。

デザイン対象となるユーザー行為とは、プロジェクトテーマに関するユーザーの行動である。民泊が可能なAirbnbを例にあげるとすれば「宿泊する」という行為のことである。これはプロジェクトの目的によっては必ずしもテーマに限定した行為である必要はない。一般的には新たなものを作り上げる際の手がかりを得ようとする場合、やや広く対象行為を設定しておく方が気づきが多いため、広めに設定しておいて必要に応じて徐々に絞り込んでいくというアプローチが有効である。先の例に従うとユーザーの行為自体は「宿泊する」であるが、広めにとると「旅行する」となる。旅行時のユーザー体験について考えると良い宿の提供だけではなく、そこでしかできないオリジナルな体験を提供することも良いユーザー体験につながるという具合に活きるのである。

手順3.実施する

ここでは基本的に定性的調査法を実施する。定性的調査法では一度にすべての協力者について調査を行うよりも1人行うごとに振り返りを行い、その都度、担当者同士で所感を共有し観点について議論すると良い。必要に応じて調査における観点の変更や追加を行い次の協力者の調査に移るというプロセスを踏むと良い。

手順4.調査結果のデータ化・整理

調査で得られたデータを同じフォーマットで整理しておくことは重要である。デザイン作業の過程でユーザーの利用文脈を見失わないよういつでも実際のユーザーを確認することができるようにしておくことはUXデザインの質を高める取り組みの一つであるので手を抜いてはいけない。

調査の結果は以下のようにまとめる。

  • フォトエッセイや日記法など、調査対象者自身に作業を依頼した場合は、その結果を集めたもの
  • 写真、インタビュー記録、発言録など調査の記録をデータ化したもの
  • 調査を直接実施あるいは立ち会った担当者の所感等 

尚、調査の実施担当者が感じた所感は分析の際の重要な手がかりとなることは多く、調査が終わるたびに担当者所感をまとめておくことは重要な調査作業の一つである。

基本スタイル

ユーザーの生活世界や利用文脈を理解するための基本的な方法は、行動観察インタビューの組み合わせである。実際によく行われている手法であり、これを繰り返し行うことで結果の情報をよりリッチなものに質を高めていく。この行動観察とインタビューは互いに補い合う関係にあり相性が良い。観察法で見えてきたことをインタビューでたずねると、ユーザーにとっての行為の意味を理解できるようになる。そうすると観察で見えてきた行動もより詳細に見ることができるし、また別の発見もできるようになる。

このユーザー調査(厳密には調査対象はユーザーに限られていないが便宜上こう表記する)における基本スタイルのもとにある考え方はトライアンギュレーションと言われる混合研究法の一つである。

わかりやすく言うと、手法を必要に応じて組み合わせるということであり、この名称自体を覚える必要はない。定性的調査と定量的調査を組み合わせることもあれば、定性的な調査同士を組み合わせることもある。より深い理解につながるデータを得ることができるので可能な範囲内でリソースを確保し取り入れることを薦める。

手法

手法とはあくまでも目的に合わせて用いられるものであり、やみくもに手法を適用すればよいというものではない。また、手法が必要になった経緯、その手法の本来使われるべき場面などをよく理解して用いることが重要である。さらに付け加えておくと、Webサービスなどの分野ではアクセスログの解析をすることが多いが、これで得られるログにはユーザーの意図や行動判断を促した要因などはわからず利用文脈を把握するには十分でない。あくまでも他の手法と組み合わせて用いることを前提として理解しておく必要がある。

調査対象者を選定する

  • リードユーザー法およびエクストリームユーザー法
  • SEPIA応用法 

ユーザー自身の考えを知る(感情・意見・態度・価値観など)

  • 質問紙法(アンケート)
  • 個人面接法(インタビュー)
  • フォーカスグループ(グループ・インタビュー)
  • フォトエッセイ 

ユーザーの生活世界や利用文脈を知る。(社会・文化的背景や物理的環境などを含めユーザーが置かれている環境全体)

  • 現場を通して知る
    • エスノグラフィ(フィールドワーク・行動観察)
      • 観察(オブザーベーション)
      • 参与観察
      • シャドーイング
      • フライ・オン・ザ・ウォール
    • コンテクスチュアル・インクワイアリー(文脈的調査)
      • 人工物ウォークスルー/ユーザビリティラウンドテーブル
  • ユーザーの経験を通して知る
    • ダイアリー法(日記法)
      • フォトダイアリー
      • カルチュラル・プローブ(文化観測)
    • 体験曲線法(UXカーブ)
      • エクスペリエンスフィードバック法
      • クリティカル・インシデント法 

ユーザーの世界世界・利用文脈に関する情報を整理する

  • AEIOU(アエイオウ)法 

参考文献