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ペルソナ法

by tagami

ペルソナ法とはユーザー調査で得られた結果から、ユーザーのゴール、態度、意識、行動などの典型的なパターンを導き出し、ユーザーを代表するモデルとしての仮想の個人を作るユーザーモデリングの手法。UXデザインプロセスの各段階においてユーザー中心になるよう、ブレないようにするための軸として用いられるほか、開発関係者間の共通理解を促進するためにも用いられる。

多くの人のニーズに答えられるサービスを作ることは非常に困難で、すべてのユーザーのニーズを満たそうとするとあらゆる機能を詰め込むことになり、さまざまな破綻が生まれる。誰かのための機能は多くの場合誰かが使えない・使いにくい機能となる。結局、誰のニーズも満たさないサービスとなってしまう。

ペルソナ法では、ユーザーのゴールに着目し、異なるゴールを持つユーザータイプごとにそれぞれデザインを用意するべきという考え方に基づく。また、一般的には複数のペルソナを作る。その中から最優先のペルソナのニーズを満たすものを目指してデザインしていく。
アジャイル型開発などではユーザー調査に基づかないペルソナを用いることもあるが、途中であってもユーザー調査を行いペルソナを作成し必要に応じて修正を加え正しいペルソナにしていくというプロセスを踏むことが望ましい。

目的

  • すべてのユーザーを満足させるサービスを作ることは困難であるため、固有のニーズを持つユーザータイプごとに適したデザインを行うことで、結果的に多くのユーザーに受け入れられるサービスを実現する
  • 開発に関わる者がそれぞれに都合よくユーザー像を解釈するなど、ユーザーのことを考えられていない状態を避けるため具体的なユーザー像を示し共通理解を促進させる
  • デザインを進める過程で、さまざまな制約や対立するような要求により、デザイン案の修正や選択をする判断が必要な場合の基準とし、デザインの検討が常にユーザー中心になるようにする

前提としての理解

ペルソナ法における「ペルソナ」とは、実在する人物であるかのように、ユーザーである個人を描写説明したものである。ここで注意したい点は下記にあげたものはペルソナとは言わない。考え方としては単なる架空の人ではなく、根拠のある仮想の人である。

<正しくないペルソナ>

  • 実在の人物をそのまま書いているもの
  • デザイナーなどが妄想・憶測で考え創り上げた空想の人物
  • 顧客セグメント

ペルソナには下記のように基づくべき特徴がある。

<正しいペルソナ>

  • ユーザー調査の質的な特徴をもとに、ユーザーの価値観および行動のパターンに基づいたもの
  • 体験価値や対象行為を行うモチベーション、行動パターンを1人の個人として表現したもの
  • ユーザー調査で得られた中からゴールの違いに着目してグループ分けを行った上でゴールの違いに合わせて作られた複数のペルソナであること

ペルソナ法において最も重要なこと

ペルソナ法において最も重要なことは、ユーザー調査からえられたデータをすべて用いて複数のパターンを導き出しその結果から複数のペルソナを作ることである。基本的には主役のペルソナのニーズを満たすためのデザインを検討していくが、だからペルソナを1人作れば良いというわけでは決してない。

ペルソナの作成方法

ペルソナの作成方法にはさまざまあるが、ペルソナ法を提唱したアランクーパーによる手順を紹介する。

1. 対象行為について調査から得られた結果から、行動の違いに影響を与えているような要因を複数検討する。

例えば、晩御飯を食べるためにレストランを選ぶという行為の場合は、お店の距離(近・遠)、価格(高・安)、食事へのこだわり(高・低い)などである。

一般に、行動パターンの重要な違いを生む要因は下記のようなものである。

活動:
ユーザーが何をしているか。頻度と量

態度:
ユーザーがそのサービスのカテゴリーや技術についてどう思っているか

適性:
ユーザーが受けた教育訓練は何か。学習能力はどれくらいか

モチベーション:
ユーザーがそのサービスのカテゴリーに関わっているのはなぜか

技能:
サービスのカテゴリーと技術に関わるユーザーの能力

2. ユーザー調査の結果に基づき、調査対象者をそれぞれの要因に対応づける。

すべての調査対象者について、インタビューの内容などをもとに要因に対してその人の位置付けを示していく。厳密である必要はなく調査者が受けた印象を大切にしながら行えば良い。 

3. 顕著な行動パターンを見出す

各要因において両端に集まる傾向があれば、それがペルソナの基礎となる顕著な行動パターンを表している、と読み取る。通常は2つ程度のパターンが発見できる。

4. ゴールを総合する

見つかった顕著なパターンごとに、データから特徴などの詳細を集めて個性を与えていき、全体像を作る。特徴とは利用環境、現在やっていること、それに対する不満、周囲の人々との関係などである。そのようにしたら、そのサービスを使うことで達成したいユーザーのモチベーションをゴールとして書く。3~5つ程度書いても良い。

5. 重複・完成度をチェックする

ペルソナの基礎がきたら、調査結果と大きなギャップがないかチェックする。ペルソナはそれぞれ、少なくとも一つのふるまいにおいてほかのどのペルソナとも違っていなければならない。基本的には対応づけがうまくいっていれば複数のペルソナで同じになることはない。

6. 態度やふるまいの記述を拡張する

ペルソナの態度やニーズ、嗜好などを表現するストーリーや必要に応じてフォトコラージュなどを付け足す。

7. ペルソナの配役を決める

作成した複数のペルソナの中で、どのペルソナを主要な対象ユーザーとするかを決める優先順位を決める。以下の6種類をこの順番で決めていくと良い。

主役:
主要な対象ユーザー。インタフェースをデザインするときにはこのペルソナだけを用いる

脇役:
主役とは異なる特殊ニーズを持つユーザー。特殊ニーズを満たす部分のインタフェースをデザインするときに活用するとともに、全体をこのペルソナのニーズにもかなうように調整する。

端役:
主役と脇役のペルソナで完全にデザインがなされるが、その結果を使ってニーズを満たすことができる。

顧客:
ステークホルダーといったビジネス上の顧客。

サービス利用者:
サービスの結果を受け取るユーザー(間接ユーザー)

黒衣・くろこ:
対象とならないペルソナ。対象としないユーザーの存在は主役ペルソナの位置付けを明確にするのに役出つ。

その他の作り方としては、KA法による体験価値分析を行い、そこからパターンを導き出しペルソナを作るなどといった方法もある。

理解を深める

ペルソナを作ることは目新しい手法でもなく軽視されることもあるが、よく考えられたペルソナは、洞察を伝え共感を誘うのに効果的な方法である。

効果的なペルソナはエスノグラフィ的な調査から生まれるものであり、統計データや市場セグメント、顧客に対する直感などからは生まれない。そしてペルソナはリアルで完全かつ具体的でなくてはならない。グループやプロフィール、ステレオタイプなどではなく、それぞれに一個人としての名前をつける。

ペルソナは、わかりやすくするためにほぼ1ページに収まるように作り名前や写真、鍵となる行動と動機付けなども含める。このペルソナが現実の問題を抱えており、これが人を引きつける。よく出来たペルソナは、実際に調査に協力した人の言った言葉を混じえながらも、自分の言葉で自らを語る。また、調査チームやデザインチーム以外の従業員にも奥深い影響を与え遠大な効果を持つこともある。ペルソナはリアルに感じられ、人間的な繋がりを作ることができるため効果的であり企業の進化に結びつく。

尚、この段階におけるアウトプットは洞察と共感を共有するための方法のほんの一部分にすぎず、ペルソナも単体では役に立たない。さらにみんなの協力によって広く共有されて初めて効果が発揮されるものであり、調査を融合するための努力を惜しまない組織によって最も力を発揮する。


参考文献