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KA法

by tagami

KA法はユーザー調査で得られた定性情報から、人々が求めている本質的ニーズや体験価値を導き出す手法である。人々の日常行為と、その背景にある価値の構造を視覚化することができるため、体験価値の全体像を把握しやすくなり、開発関係者での体験価値の共有がしやすくなるというメリットがある。基本的にユーザーの行為とその背景にある価値観を把握するような調査によって把握された定性情報を分析する。

KA法の概要としては、インタビューなどで得られた発言などから特徴的な出来事を複数抜き出し、その出来事一つひとつにふくまれるユーザーの価値の解釈を行う。日常の出来事にはその行為を行う理由や価値が必ず含まれており、それがユーザーの行為の価値であり体験価値の実態であるといえる。

インタビューなどで得られた発言から抜き出した特徴的な出来事一つひとつを1枚のカードで解釈していくため出来事一つひとつを丁寧に解釈することができる。そしてその解釈のもと、その行為の背景にある体験価値を導き出していくためより詳細な分析を行うことができる。

また、導き出された価値がどの調査結果に基づいて分析されたかがいつでも戻って確認することができ、その価値の妥当性をいつでもチェックできるため第三者による検証もしやすい手法である。

KA法を実施するまえに理解しておきたいことは、KA法において扱う価値は日常の行為に含まれる価値であり、それは非常にささやかなものである、ということだ。そのタイプは大きく3つに分けられる。

  • 出来事の中の「モノ」が生む価値(電卓により簡単に計算ができる価値など)
  • 出来事の中の「コト」が生む価値(友達と話すコトで楽しい時間を過ごせる価値など)
  • 出来事の関与者の「認識」が生む価値(地下鉄は渋滞がないため遅刻する不安を感じない価値など)

KA法は、ワークショップ形式でメンバーとともに実施すると良い。ユーザーに対する共感の促進、構造を検討することによる構造への納得感を得ることができる。UXデザインではユーザーの全体像をメンバーで共有できていることは非常に重要である。

目的

  • 人々が日常的に行なっている行為に関する調査結果から、人々の行為の背景にある体験価値および本質的ニーズを導き出す
  • 行為に基づいた体験価値の構造を探り、仮説的な価値構造からデザイン提案により実現すべき体験価値を発見する

手順

1. 事前準備

ユーザー調査で得られた結果をテキスト情報として整理する。また、ユーザー自身の言葉から得られる情報だけでなくフォトダイアリーや観察などから調査者が解釈した結果も用いることができる。

2. KAカードの作成

テキスト化された情報から、特徴的なユーザーの行動を部分的にピックアップし、カードの出来事欄に書く。ピックアップする行動に関しては、複数のメンバーがそれぞれの視点で特徴的だと思う部分をピックアップすれば良い。出来事には次の要素のうち2つ以上を組み合わせて書くようにする。

原因:「〜だったので(状況)」・「〜と思ったので(動機)」
行動:「〜した」
結果:「〜だった」

調査データそのままでは意味が通じない場合は必要に応じて文章を補う。30文字を目安とし、なるべく複数のトピックを含まないようにする。

3. 心の声の解釈と体験価値の導出

出来事の内容をよく読み、ユーザーの心境を想像して端的に表現する。なるべくユーザーになったつもりで共感して書くよう心がけ、うまく表現しようなどとは考えず自由に書いた方がリよりリアルな状況を強調できて良い。尚、心の声が複数読み取れる場合は同じ出来事のカードをその数だけ作れば良い。

最後に出来事と心の声を手がかりに価値を書く。このとき心の声が出る理由や意味を解釈するように考えると良い。このとき「〜する価値」「〜できる価値」のように表記することが重要である。多少長い文章でも構わない。

<できなかった行為・やりたくてもできていないことについて>

データの中には現在ユーザーが実現できていないことが書かれていることもある。こう行った場合、未充足な体験価値がある、と考える。この場合の手順は以下である。

心の声は、そのままネガティブな心の声を書く。価値はユーザーが本来望んているポジティブな価値を解釈して書く。このとき末尾に(未充足)などと書き加えておく。尚、注意点としてここで価値を書く際は書いてある内容がイメージできるくらいの抽象度合いが良い。抽象度が高すぎると「簡単・便利・安心・安全」などに行き着いてしまうので、この場合は少し具体化させる。

4. 価値マップの作成

価値マップはユーザーの体験価値の構造の全体像を視覚化したものでありユーザーに対する理解を深め、次の段階におけるアイデア発想に役立てることができる。全体像の視覚化は、分析者の主観的な印象にとらわれずより客観的で広い視点でユーザーの体験価値や本質的ニーズを検討することができるため重要な意義がある。

KAカードは出来事をピックアップする密度にもよるが、5認定度の調査で50~150枚ほどになる。全てのカードにおいて価値を導き出せたら、それらをすべて「価値」に着目しながらよく似た価値同士でグループ分けをしながら並べていく。(KJ法 – 親和図法の要領で行うと良い)

ある程度カードがまとまったらそれらのまとまりを「〜する価値」「〜できる価値」とラベル付けする。このラベルが中分類の価値となる。尚、抽象度の上げすぎには注意が必要である。

中分類の価値のグループを1つのカードとして扱い、テーマとする体験について価値観の因果関係や時系列的な関係性といった体験価値の構造を探っていく。基本的には体験の前、中、後の順に大きく整理していくと関係性を見つけだしやすくなる。どうしても関係性が見つけ出せない・検討する時間がないという場合は分類に基づく表現でも良い。

注意点:
カードの価値を見ずに「〇〇系」といった分類名を先に作ることや「〇〇軸×□□軸」など型にはめようとすることは避けたい。あくまで分析結果に基づき、分析結果から探っていくことが基本である。
また、うまくグループに分けられないカードは出来事や心の声を確認し必要に応じて体験価値の解釈を見直し書き直して良い(体験価値は他の価値と比較することで明確になるという特徴がある)。それでも分類できない場合は「その他の価値」というグループを作れば良い。

5. 既存製品・技術等のマップ展開

価値マップで示された価値を提供しているような既存のサービスや技術を価値マップ上に表す。実際の日常生活では、ユーザーはさまざまな方法で求める体験価値を充足しようとしている。競合他社のサービスだけでなく思いもよらぬ方法で充足しているという場合もある。ユーザーの価値を軸にサービスや技術をマッピングすることは取り組むべき機会を発見しやすくする。

参考文献