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ジャーニーマップ

by tagami

ジャーニーマップは人々とサービスとの関わりを時間軸で表現したものであり、複数のタッチポイントをまたぐ体験の連続性に着目し、その過程で起きるさまざまな出来事について、行動、感覚、認識、 思考、感情などを明らかにする手法である。ユーザーの感情は文脈によって大きく変化するため時間軸で体験を表現するジャーニーマップでしか扱うことができない。特に体験の前に形成される期待やモチベーションは評価や感情に影響を与えるため体験の前後での感情の変化を表現する必要がある。

ユーザージャーニーマップ、カスタマージャーニーマップ、エクスペリエンスマップなどは同義である。明確な方法論などはなく必要に応じてさまざまなやり方がされている。

ジャーニーマップはその名の通り、ユーザーとサービスとの接点での体験を旅に見立てている。その言わんとしていることは旅には目的地がああり、そのために計画・準備・最中・終わりといったさまざまな段階がありそれらの出来事が一連となっている。そしてその一連が体験となり一つのストーリーとなる。その特徴がサービスによってユーザーが体験する一連の文脈を表現するのに合致しているのである。特徴をまとめると次のようになる。

  • ユーザーがゴールを達成するまでの空間と時間を視覚化し、サービスとの関わりの一つのストーリーを描く
  • 対象とするサービスを体験する前、最中、後を基本にしつつ、体験の段階を区切って段階ごとの体験を整理する
  • 各段階における体験に対してユーザーが抱く感情やモチベーションをとらえる 

UXデザインプロセスにおいてジャーニーマップは価値マップを作成したのちに作成するペルソナののちに作成する。そのため、それぞれの手順を踏んだことを前提としており、主役ペルソナと脇役ペルソナの2つにおける現在の体験を表現するモデルとして紹介する。

また、ジャーニーマップの作成は関係者を集め、ワークショップとして実施すると良い。ジャーニーマップの作成はUXの理解を深めることができるためである。

目的

  • 複数のタッチポイントをまたいだ一連のユーザー体験の全体像を、プロセスだけでなくユーザーの行動や感情を含め視覚化する。これにより、時間軸の観点でユーザー体験を関係者間で共有できるようにする
  • ユーザー体験の全体像を示すことで、改善すべきポイントを検討しやすくするとともに、理想的なユーザー体験の概要を検討できるようにする 

一般的な2つのモデル

ユーザーが現在行なっている体験を表現する:AS-ISモデル

現状のモデルを表現するAS-ISモデルは、問題点や課題、改善点を発見することが目的である。一般的にはペルソナの典型的な行為のシナリオとユーザー調査の結果に基づき、時間軸で視覚化していく。顧客視点で広く体験の範囲をとらえることでユーザーの本質的ニーズを理解しやすくなる。

理想的なUXを表現するモデル:TO-BEモデル

プロセス等の改善や新しいサービスにより実現する理想的なUXを表現するTO-BEモデルは、各段階での体験の課題を発見し、より詳細なアイデアを検討するためにも用いられる。

範囲と目的で違う4つのジャーニーマップ

ジャーニーマップは作る目的によって4通り作ることができる。その際の観点は検討の目的体験の範囲である。

検討の目的とは、現状の問題点を発見するのか(AS-IS)、新たに作り出す体験を検討するのか(TO-BE)の2つである。

体験の範囲とは、自社が提供しているサービスに関係する範囲を体験の全体としてとらえるのか、ユーザーのモチベーションの発生からゴールまでを体験の全体とするかである。

実際のユーザーは特定のサービスが対象とする範囲は意識しておらずそのサービスはゴールを達成するための一つの手段にすぎずその範囲はゴールを達成するための一部分にすぎない。そのためジャーニーマップを描く際には適切に範囲を決め、どの目的のためのジャーニーマップであるかを理解しておく必要がある。

ジャーニーマップの4象限(長谷川, 2013)をもとに作成

作成方法

1. 縦軸を6つに分ける

上からステージ、ユーザーの行動、ユーザーの思考、ユーザーの感情、関係する人の行動、環境と項目を作成する。尚、プロジェクトの目的によっては必ずしもこの6つである必要はない。

2. 行動をいくつかの段階に分ける「ステージ」を作る

体験の範囲をサービスに関係する範囲としている場合はタッチポイントにあたる。

3. ユーザーの行動をステージに沿って挙げていく

ユーザー調査から時系列に整理していく。

4. ユーザーの思考や感情を検討していく

ユーザーの思考や感情を検討し、時系列に整理していく。

5. その他の要素も表現する

脇役ペルソナや端役ペルソナといった関連するユーザーの行動と物理的な環境を表現する。

6. 清書する

後のプロセスにおいてユーザー中心デザインからブレないよう参照することとなるので、その際に活用しやすいよう清書する。

ポイント

ジャーニーマップは行動シナリオと基本的な内容は重複するため行動シナリオを書けばジャーニーマップが必要ない場合もある。しかし、行動シナリオを書いていたとしてもジャーニーマップを作成する意義はある。

行動シナリオは構造的表現に限界があるのに対し、ジャーニーマップはUXを構造的かつ網羅的に理解できる。さらにマトリクス構造のため複数で議論しやすくワークショップ形式で検討することに向いている。これはユーザーの利用文脈やUXに対するメンバーの共通理解を深めることができるというUXデザインにおいて重要なポイントとなる。

こうしたポイントを押さえていれば必ずしもきれいに作ろうとする必要はなく、きれいに作ることに時間をかける必要はない。プロジェクトの目的に応じて適切に表現できているかがポイントである。

参考文献