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コンテクスチュアル・インクワイアリー

by tagami

コンテクスチュアル・インクワイアリー(Contextual Inquiry:文脈的調査)は、調査者がユーザーの現場におもむきユーザーの行動を観察しながら、その文脈に応じてインタビューを行い、ユーザーの行動の背後にある考えや行動の仕組みを明らかにする方法である。

実際のユーザーがサービスをどのように利用しているか、実際の利用シーンにおける環境やユーザーの行為はどのようなものかといった実際のユーザーを深く理解するために用いられる、観察とインタビューを組み合わせた文脈理解を重視した一貫したデザイン手法である。

コンテクスチュアル・デザインの1つのステップである。

目的

  • 実際の利用環境の中で行われるユーザーと人やモノとのコミュニケーションの流れ、時系列での作業手順、作業過程で作成したり使用されたりする人工物や道具、作業に対して文化が及ぼす影響や現場の物理的環境が及ぼす影響などを明らかにするための情報を得る
  • ユーザーが言葉では説明しきれない、行動の背景にある考えや行動の仕組みを理解するための情報を得る

原則

  1. ユーザーの行為が行われている現場に行き、ユーザーの普段通りの行動を観察する(現場での観察)
  2. 調査者は、師匠であるユーザーに弟子入りするように、ユーザーの行動や作業について教えを乞い、作業を観察しながらインタビューし、作業の仕組みを理解する(師匠と弟子モデル)
  3. 得られたデータはすべて、ユーザーにとっての意味を解釈し仮説を立てる。(データの解釈)
  4. 調査者は、調査対象者であるユーザーの立場の視点から物事を見るようにする(調査対象者の立場の見方)

2の師匠と弟子モデルというのはこの手法における最大の特徴である。やり方としては、①師匠(調査対象のユーザー)に作業をやってもらい見せてもらい、弟子(調査者)はそれを見て理解する。②師匠にその作業をやる理由、意味、コツなどを根掘り葉掘り聞く。

このモデルで行うことで調査対象のユーザーは言葉だけでは説明しにくい、作業の背景にある考え方や価値観、コツといったことを説明しやすくなる。

アジャイルUXのコンサルタントである樽本徹也氏はこのモデルを適用する際において、「ユーザーは『無口で気難しい師匠』であるから、話を引き出す良い弟子になるべきだ」とアドバイスをしている。「ユーザーは話を要約する」「ユーザーの話は不完全」「ユーザーは例外に触れようとしない」こうした前提を持って行うと良い。

手順

1. 調査フォーカスの設定

調査の目的・対象行為を調査前に決めておく。

調査フォーカスは、「作業はどのように行われているか」といったものが一般的である。尚、この調査フォーカスは調査中に拡大することを推奨している。これは特定の事柄に焦点を当てつつ、周辺の活動や道具などとの関わりについても質問をするなど、ということである。

2. 対象者へのあいさつと仕事の概要の確認

仕事に対する大まかなやり方をインタビューする

3. 実際の仕事の観察とインタビュー

まず仕事の現場を見せてもらい写真などに記録する。次に一連の仕事を対象者(師匠)に実際にやってもらい、その様子を記録する。

4. 作業に対する質問

調査者(弟子)は対象者(師匠)の作業プロセスでわからないところ、気になったところがあれば、その場ですぐに理由などを質問する。尚、質問リストをあらかじめ作成したりはしない。なるべく行為をよく観察し、それに基づき対象者と対話するように質問する。

話の中でより詳細に聞き出せるように対象者の発した内容から質問をすると良い。例えば「よく使っています」という言葉に対し「よくというのは具体的にどんなときですか?」といった具合である。

5. 記録した作業内容の確認

記録した作業の流れを対象者に確認する。

作業手順を聞き出す際に注意すべき点

作業手順(タスク)を聞き出す際に注意すべき点として、以下の言葉が出たときは、さらに本質的な作業があると考え掘り下げるとよい。(Indi Young, 2014)

もっと具体化すべき語

  • 検討する → 何をするか
  • 対応する → 何をするか
  • わかる → 何が
  • 得る → どうやって
  • 起こる → 何が、どうやって
  • させる → 自分は何をするか
  • 管理する → 具体作業は
  • 計画する → 具体作業は
  • 読む → その目的は
  • 受け取る → その目的は

タスクでないもの

  • 使う → 事実
  • したい → 願望

現場を訪ねられない場合の手法

セキュリティの関係で外部の人が入れない、自宅などプライバシーの関係で抵抗があるといった場合や調査が何日にも及ぶ場合などは調査を行うことができない。このような場合には、コンテクスチュアル・インクワイアリーの考え方や基本的な手法を応用したユーザビリティラウンドテーブル人工物ウォークスルーといった手法を用いると良い。

参考文献