コンセプトテストとは、サービスのコンセプトを、言葉や絵、模型、ストーリーボードなどで表現し、そこで表現されたアイデアを想定ユーザーに提示し、受容性や利用意欲などの反応を把握するユーザー参加による評価の手法である。
想定ユーザーと直接面談しながら評価や反応をインタビューするが、Webアンケートにて行うこともある。一般的にはサービスの特徴や利用シーンをイラストやシナリオで説明した「コンセプトボード」を提示し、その内容に対する評価・反応を見る。調査対象者にはペルソナと合致するような想定ユーザーを選定する。
尚、コンセプトテストはあくまでコンセプトの修正・ブラッシュアップであったり複数案から絞り込んだりするために行うものであり、市場規模予測などを行うものではない。
アンケートで定量的に把握する方法とインタビューで定性的に把握する方法があるが、実際には組み合わせて行われる。インタビューの際は、提示されたコンセプトを見て、調査協力者が自身の経験で補う利用文脈を把握し、そこでの受け止め方や理解のされ方についてインタビューする。
UXデザインではシナリオを用いたコンセプトテストをシナリオ共感度評価と呼ぶこともある。
目的
- 提案する製品やサービスのコンセプトが想定ユーザーにとって受容性があるか、魅力的であるかを把握する
- このテストの結果をもとに、コンセプトの修正・選定するための根拠となる情報を得る
手順
1. 事前インタビュー
対象となる行為について現在どのように行なっているかなどをインタビューする。尚、インタビューの様子はビデオなどで記録する。
2. コンセプトの想定ユーザー(ペルソナ)について説明する
3. コンセプトボードを提示し、コンセプトを説明する
一般的にはアクティビティシナリオを提示する。ただしアクティビティシナリオは文章のみのためイメージの自由度が高すぎて、利用文脈が調査対象者の想像に委ねられてしまう。そのため、コンセプトをわかりやすく整理しつつ、利用文脈のイメージを視覚的に表現したものも加えたコンセプトボードを用いる。ストーリーボードや9コマシナリオなどはよく用いられる。
コンセプトテストでは、コンセプトボードやストーリーボードなどの表現の仕方が結果に大きく影響することもあるため、検討しているアイデアを的確に表現することがポイントとなる。
この時、質問があったら自由にたずねてもらうようにする。質問があった際はすぐには回答せず「なぜそう思われましたか?」と質問した理由をたずねると深層理解に繋がる情報が得られるので良い。相手が否定されている気持ちを抱かないようたずね方には注意する。
4. 提示したコンセプトの評定を行なってもらう
コンセプトに対する評価尺度を用いて、今提示したコンセプトの評定を行なってもらう。終わり次第その評定の理由としてどのような利用文脈を想像したか、どのようなサービスだと理解したかについてたずねる。
まだ十分に具体化されていないアイデアを提示するので、コンセプトそのものが正確に理解されないこともある。そのため、単にコンセプトの良し悪しを数量化して扱うのではなくコンセプトがどのように理解されたかを把握することが大切となる。
また、具体性が十分でないアイデアであればあるほど調査対象者が自身の経験に基づいて想像で利用文脈を補ったうえでコンセプトの良し悪しを判断していることとなる。そのため、どのような利用文脈を想定したかをたずねることは、UXデザインでは極めて重要な情報となる。
複数の評価尺度を用いて総合的に把握していく。代表的な尺度は次の項目に対し5段階にて評定してもらう。(とてもそう思う・ややそう思う・どちらとも言えない・あまりそう思わない・全くそう思わない)
- このサービス説明は充分にわかりやすいですか?(わかりやすさ)
- このサービスは、あなたのニーズに合っていると思いますか?(ニーズ合致度)
- この利用シナリオに対して、どの程度共感しますか?(共感性)
- このサービスに対して、どの程度魅力を感じましたか?(魅力度)
- このサービスを目新しいと感じますか?(新規性)
- 利用シナリオにあるような利用経験をしてみたいですか?(経験意欲)
- このサービスが妥当な価格なら使用してみたいと思いますか?(購入意欲)
実際には、コンセプトの提示→評定を下記の通り2段階に分けて行うとより妥当に評定が行われることがわかっている。また、魅力度と利用意欲は2度聞くことでその差を比較するとアクティビティの魅力が十分なものであるかを分析することができる。
第1段階:バリューシナリオを提示し、「ニーズの合致度」「新規性」「魅力度」「利用意欲」の評定
第2段階:利用シーンとアクティビティシナリオを提示し、「共感度」「魅力度」「利用意欲」の評定
5. 他のコンセプト案に対しても同様に行う
複数のコンセプト案に対し2〜4を繰り返す。
6. アイデアの順位づけしてもらう
すべてのコンセプト案の評定が終わったら、提示したアイデアを相対的に順位づけしてもらい、同時にその理由についてもたずねる。