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ユーザーの意欲と態度

by tagami

UXにはそのサービスに対するユーザーのモチベーションといった心理的要因が影響を及ぼしている。このモチベーションによるユーザーのサービスに対する態度を明確にしておくことは、UXをより詳細に理解していくために有効である。

モチベーションが及ぼすUXへの影響は特にインタラクティブ製品において顕著である。インタラクティブ製品とは、インタラクティブ(相互に作用するよう)な操作が必要な製品のことで、現在のコンピュータやスマートフォンによる情報処理の形式などがこれにあたる。通常、複数の機能が提供されておりこれらの機能はユーザーが意図を持って積極的に働きかけ、操作しなければ機能しない。例えばiPhoneは付属しているイヤホンを接続するとその音量ボタンでカメラのシャッターを切ることができるなど、普通に使用していては気づけない機能が多々ある。これらの機能はユーザーがより便利に使いたいなどの意図を持って積極的に情報を取りに行くなどしなければ機能しない。

UXに強い影響を与えるモチベーションとしては、自己効力感(SE : self efficacy)と製品関与(PI : product involvement)がある。

これは、安藤昌也教授の『インタラクティブ製品に対する利用自己効力感尺度の信頼性の検討』にて明らかにされている。これまでインタラクティブ製品に対する研究は、Gist, etal.やBurkhardt &Brass、Compeau & Higginsなどによる測定尺度の開発、最近では Compeau & Higginsらの尺度を参照にした上でのインターネット利用に特化したインターネット自己効力感に関する研究などがなされている。しかし、これらはユーザの一般的な自己効力感の測定を目的としたものでなかったり、コンピュータもしくはインターネットに限定したものであったり、家電などを含むインタラクティブ製品全般を対象としたものではなかったため、安藤昌也教授は独自の研究として実際にユーザのインタラクティブ製品に対する心理的要因を測定可能な尺度を開発している。その内容について紹介する。

自己効力感

自己効力感とは一言でいうと「やれるように頑張れると思うか」である。

これは心理学者のアルバート・バンデューラ(Albert Bandura)が定義したモチベーションの一種でその定義としては、以下である。

「それぞれの課題が要求する行動の過程を、うまく成し遂げるための能力についての個々の信念」

Bandura, A. (1977), Social Learning Theory; Englewood Cliff s, Prentice-Hall, NJ, USA.

ここで注意したい点は、「やれるかどうか」という能力についてではない点である。

例えば新進気鋭のスタートアップ企業がiPhoneに変わる新たなデバイスを開発したとする。ここでこれまでiPhoneを人並み以上に使いこなせていたと感じていた人がこの新たな製品に対しても使いこなせるであろうと思ったとする。これは自己効力感が高い。逆にiPhoneの使い方があまりわからず困った経験が多く、あまり使いこなせなかった人はこの新たなデバイスに対してきちんと使えると思わないとすると、この場合自己効力感は低い、となる。

製品利用における自己効力感を測定する尺度は以下である。これはインタラクティブ製品に関しては特定の製品に限らず測定するとこができる。これらの項目について7段階、7点をとてもそう思う、1点をまったくそう思わないとして評定し、合計値を自己効力感得点として用いる。

  1. 電子機器をよりよく使うために、自分なりに利用法を工夫したりする
  2. やりたいことがあれば、自分からすすんで機能や使い方を探す
  3. 電子機器がそなえている機能のうち、どの機能を使えばやりたいことができるか、だいたいわかる
  4. トラブルが起こった時、あわてずに原因を推測して、対処のしかたを考える
  5. 機能や操作がわからなくなった時は、自分で取扱説明書やマニュアルを読んで理解できると思う
  6. もっと効率的な方法や使い方ができないか、調べたり考えたりする
  7. どんな電子機器であっても、自分がやりたいことは操作できる自信がある
  8. 電子機器を使うこと自体が、楽しいと感じる方だ
  9. どのボタンを操作すればどうなるかが、だいたいわかるので、操作に不安は感じない
  10. 自分には操作が難しいと感じても、あきらめないで、できるまでがんばる
  11. 自分のやりたい範囲で、自分なりに使いこなせていると思う
  12. 新しい機能や使い方を自分で見つけて、できることを、どんどん広げていける
  13. 他の人と比べて、使いこなしていると思う
  14. 新しい製品や新しい技術に興味がある
  15. 普段の利用で起こるようなトラブルであれば、だいたい自分で対処できる
  16. もっと有効な使い方ができるなら、本や雑誌、インターネットなどからも情報収集する方だ
  17. 電子機器の機能が、どのように実現されているかに興味がある
  18. 新しい電子機器を使うときは、その機器がそなえている機能の全体像を、把握するように努力する
  19. トラブルでサポートセンターに電話をする時、トラブルが起こった状況などを詳しく説明できる
  20. 電子機器を買う時は、やりたいことに適した機器を、選ぶようにしている

製品利用自己効力感尺度の因子分析結果
安藤昌也『インタラクティブ製品に対する利用自己効力感尺度の信頼性の検討』より

製品関与

製品関与は一言でいうと、「対象となる製品に対する関心の度合い」である。これはユーザーの個人的な目的や価値観と製品との関係の度合いを意味する。定義は以下である。

「個人にとっての対象の知覚された目的関連性に関わるもの」

Laaksonen, P. (1994), “Consumer Involvement: Concepts and Research, “ Routledge, NY. (日本語訳: 池尾恭一, 青木幸弘, 訳(1998), 『消費者関与 – 概念と調査』, 千倉書房, 東京)より

3つの側面から尺度を測定する。感情的側面情報的側面認知的側面である。

使う楽しさ
1. この製品を使うことが、楽しいと感じる
2. 自分の趣味や興味に関する製品・サービスである
3. 自分が積極的に使いこなしたり、活用したりする様子を想像できる
4. 自分らしさが反映できる
情報感度5. 新しい機種が出たら、ほしいと思う
6. 新しい機種が出ると、とても気になる
7. 新しい機種に搭載されている機能について、だいたい知っている
利用効果の認識8. この製品を使うとどんな効果が得られるか、想像できない
9. 使い方や利用の仕方が、わからない
10. どんな風に使えば、自分のためになるか、想像できない

安藤昌也『人工物の利用におけるユーザ要因の分析とその測定』より

利用態度の分類

先に述べた2つの意欲を組み合わせることで利用態度を分類することができる。これはあくまでもUXをさらに詳細に理解できるようにするための概念の整理ではあるが、調査対象者の選定を行う際に用いたり、簡易なペルソナを作る際のフレームワークとしても活用されている。

SEPIA法(Self-EfficacyのSE, Product InvolvementのPI, Analysisの頭文字からなる。)により下図のマトリックスによって分類することができる。マニアユーザーとミニマム利用ユーザーを合わせて6割ほど、他2つのユーザーはそれほど多くない場合が多い。

SEPIA法によって分類された4つの利用態度
安藤昌也『長期実利用の結果としての製品使用評価をどう把握すべきか – 利用特性による分析の試み』ヒューマンインタフェース学会研究会報告集 より